Wワーク(2)マッサージチェア説明員(販売員)のバイトを始めてみた2

前回マッサージチェアの販売員のバイトをはじめて配属店舗も決まって強烈な敵キャラが登場まで。

ライバル会社の販売員。過去に販売員NO1の経歴を持つと自称する、強力なおばさん。

この敵キャラおばさん、決して悪い人ではなく、むしろ良い人で、もっと言えば立派なおばさんかもしれない。

この道で10年やっており、幸運にも最初に繁盛店に配属されたそうで、一年目から売りまくったそうです。

おばさんの戦法は、とにかく話しかけて親しくなり、「この人ともっと親しくなりたい」と思わせることのようである。

しかも、二回目、三回目と試しに来てくれるお客さんには、ちょっとしたプレゼントをあげるなど、一流ホステス並みの気配りを見せるのである。

しかも、店舗内での自分の位置(メーカーヘルパーなので地位は無い位置である)を築くためにも相当の労力をかけているようである。

こうして観察していると思わず唸ってしまうほど真剣に取り組んでいるのが分かる。

かといってこのばあさん、お金に困っている訳では全く無い。むしろ裕福なおばさんのようだ。

亭主は何年か前に亡くなっているそうだが、年金と、某親族から非常勤役員としての給料をもらい、マッサージチェア販売でも土日祝日のみで月に10万以上の収入がある。そこそこのサラリーマンより収入がある。俺よりも(><)

しかも、かつては亡くなった旦那の給料とは別に、自分でずっと自営業をしていたので、元からお金持ちだったそうだ。

実際、配属されている店舗で電気製品を買ったのを見たが、値段の高い高級な製品をまとめ買いしていた。

またあるとき、指輪を外し忘れてきた(わざとに決まっている)といって見せてくれたのが3カラットのダイヤ付き指輪。まばゆいばかりの輝きとはこの事だろう。素人でも光が違うのが分かる。白っぽく発光しているのだ。たいしたこと無いのよ、ほんの数百万円といっていた。

その後いろんな話を聞いたが矛盾は何一つ無いので本当のことのようだ。嘘はつかない人のようだ。

実は、本人に向かって言ったことは無いが、背格好や顔の輪郭が自分のお袋に似てるので、少しぐらい何か言われても嫌いになることは無いのであった。

マッサージチェア界の金さん銀さんの確執

さてボスキャラおばさんネタの続き。

おいらが配属されて2週間後、さらに別なメーカーの販売員が1ヵ月半の限定で配属されてきた。

マッサージチェア業界は、「フジ医療機」、「ファミリーイナダ」、「パナソニック」という三強がしのぎを削っている。波はあるがほぼ拮抗しているといってよいのかと思う。

ど新人の自分が配属されている家電量販店に、ボスキャラおばさん1(以後B1)と短期でやってきた別なおばさん2(同B2)と自分とで販売員三人が揃ったのだ。

さて期間限定でやって来たB2は10年以上前からB1を知っていたそうである。

かつてB1もB2も同じメーカーに在籍していて、一緒にお茶を飲んで話したことがあるそうである。

そのことをB2は覚えていたのだが、B1が忘れていたのである。

B1は「なんだか記憶に無いよのね、記憶力はいいのにさ」と言っていた。「影が薄くて眼中になかったから記憶にも残らないような人よ」と言いたいのだろう。

片やB2は頭にきていた。「普通なら覚えていられるわよね」といっていた。「忘れるなんて失礼ね、もうボケてるんじゃないの?」と言いたい訳だ。

顔合わせから火花がちってしまった。両方やり手ババアなのに敵愾心に火がついてしまった。喧嘩するわけには行かないので、仕事にやる気を出しちゃった。こりゃ新人の俺は出る幕無いのね・・

このあと一ヶ月半おばさまたちの(サッカー選手並みの反則スレスレの)熱いバトルが繰り広げられたのだ。

B2はこすいババアで、他の販売員が目を離したすきを見て、マッサージ途中の客を椅子から引き剥がして自分のメーカーの椅子に座らせるという荒業の常習者なのだ。これは反則である。他の店舗ではこれで取っ組み合いの喧嘩になることもあるらしい。なんだかバカバカしい世界であるが本人たちは必死なのだ。

B1は、「B2みたいに自分のメーカーばかり売ろうとしてガツガツすると客がお店を嫌って売り場に来なくなる、どのメーカーであれまずはこの店で売ることが大切なのよ」とご高説をのたまう。尤もである。非常に大切な考えである。

B2に「B1は↑こう言っている」というと、「どこが!自分(B1)の客が他のメーカーも乗りたいというと、ついていってわざと不快な痛い設定にして『このメーカーはとんでもなく痛いのよ』と言っているのよ。言ってることとやってることが、てんで違う人よ」と言っていた。

たしかに。B1は私の接客の現場に近づいてきて、ああだこうだと親切ごかして説明をするふりをしながら、終わると「じゃあこっちも乗ってみて」と客をさらってしまうのだ。

こういう時B2が寄ってきて、「又お客さん取られたじゃないの、あのB1は最初からそのつもりなのよ、しっかりしなさい」と怒られてしまうのだ。

いやこの場合はそうでははない。B1は最初から横取りするつもりではない。接客が下手で販売の決定力がない自分から、客の購買ベクトルをB1に移したのであって、最初から悪意に基づいた行動ではない。ある意味「この店で買ってもらう」のためなのだ。新人のの自分の接客ではお客さんは何も買わずに帰ってしまう。このへんの機微はガサツなB2には解かりにくいところだろう。

「業界のしきたり」VS「この店のルール」

また、B2の客がB1のメーカーにも乗ってみたいというと、B1は「ありがとう後はあたしが接客します」と言って、最後まで接客しようとすがりつくB2に、肘鉄を食らわすのだ。

マッサージチェア業界は、始めに接客した人が最後まで接客する権利があるらしく、他のメーカーの椅子を乗っても継続して接客していいそうなのだ。とは言ってもなんとなくのしきたりということなので、「自分のメーカーは自分で接客します。あんたの客なんか取らないわよ。この店はそういうルールなのよ」とボスが言えば引き下がらざるをえない。

法律も定義もはなから存在しない「業界のしきたり」と「この店のルール」がぶつかるのだから最後は力関係で決着がつく。B1の勝ちである。

引き下がったB2は怒り心頭で愚痴を言いに来る。「あの人に肘鉄を何回も食らわされた、足も踏まれたのよ。ひどい人だわ信じられない」そう言われてもうかつに同情の言葉は吐けない。あとでB1に伝わったら自分が吊し上げを食うのは目に見えてる。従って、「へぇー」「うわー」「いや、すごいですね」と感嘆詞を投げ込むのが精一杯。

しかし内心は面白おかしくて仕方がない。つい緩みそうになる目元口元を引き締めるのに苦労する。遣り手婆2人のギリギリの客争奪戦は、自分にとっては「一触即発の抗争」とは紙一重の「漫才」であった。いま笑っておく「はっははははははははははははあぁぁ」