土日のアルバイト 家電アドバイザープラチナ受験 太陽光発電

目次

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太陽電池モジュールの発電効率を高める工夫

 

太陽電池モジュールの
発電効率を高める工夫

国内住宅用の太陽光発電システム市場は、国の補助金制度や発電した余剰電力の倍額買取制度、さらにオール電化商品の普及などによって急激に伸長している。
それと同時に、メーカー各社はそれぞれ発電効率を高める工夫を施しており、太陽電池モジュールの品質も向上している。
住宅用太陽光発電システムで現在主流のシリコン太陽電池モジュールの材料は、大きく3種類に分けられる。すなわち、単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコン(アモルファスシリコン、微結晶シリコン)である。
このうち発電効率が最も高いのは単結晶だが、生産コストも高い。ただ、高温時には発電効率が低下する温度特性がある。
多結晶は単結晶よりも生産コストが安く抑えられるが、発電効率も低くなる。高温時に発電効率が低下する温度特性は、単結晶とほぼ同様である。
一方、薄膜型は生産コストが結晶系よりも安く抑えられるものの、それと比例するように発電効率も低い。そのため、狭い屋根が多い日本の住宅用には向かないとされる。ただし、高温時でも発電効率が下がりにくい温度特性を持つ。
この3種類の長所を組み合わせて発電効率の向上がはかられた「ハイブリッド型」と呼ばれる太陽電池モジュールが開発されており、代表的なものは2種類ある。
そのうちの1つは、単結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせたもので、単結晶シリコンの「発電効率の高さ」と、アモルファスシリコンの「高温時でも発電効率が下がりにくい温度特性」を組み合わせて発電効率をアップさせる。
もう1つは、微結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせたもので、赤い色(長波長)に対して効率の良い微結晶シリコンと、青い色(短波長)に対して効率の良いアモルファスシリコンを組み合わせて太陽の光を効率よく変換し発電効率をアップさせる(写真)。
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▲単結晶と薄膜型の「ハイブリッド型」
さて、太陽電池モジュールとは太陽電池セルの集合体であるが、セルの表面には「バスバー」と呼ばれる細い電極がある。このバスバーに、セルで発電した電気が集められて接続箱へと送られる。
 バスバー間隔が広いと集電時に電気抵抗が大きくなりロスが生じる。そこで従来は2本だったバスバーを、新たに4本に増やしたセル(単結晶および多結晶)を開発したメーカーもある(写真)。
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▲バスバーを4本に増やしたセル
またバスバーは、通常はセルの表面にあるため、受光面積を狭めてしまう。そこでバスバーを裏面に設置するバックコンタクト方式を採用したメーカーもある(単結晶)。バスバーに太陽光が遮られないため、効率よく発電できる(写真)。
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▲バスバーを裏側に設置したモジュール

太陽電池パネルの「主流」が 多結晶から単結晶へ

国内の住宅用太陽光発電システム(以下、太陽光発電)は「国の補助金制度」や「余剰電力の買取制度」といった施策に加え、東日本大震災による全国的な省エネ・創エネの機運などによって大きく伸長している。
とりわけトレンドとして注目されるのが、太陽電池パネルの出力(変換効率)の向上である。
従来、太陽光発電に多く採用されてきたのは「多結晶シリコン」である。製造コストと発電効率のバランスが良く、多くのメーカーが採用してきた。
しかし最近では、ほとんどのメーカーが「単結晶シリコン」を採用するようになった。単結晶シリコンは多結晶シリコンよりも発電効率が高い。その一方で開発 コストも高くなるが、市場が伸長するにつれて商品にも競争力が求められるようになり、より発電効率の高い単結晶シリコンに軸足を移すメーカーが増えてきた。
また、単結晶シリコンの変換効率をさらに高めるためにも、さまざまな工夫が施されている。
一般的な太陽電池セルの表面には、発電した電気を集めるための縦横の「電極」という線が配置されている。
これらの電極の数が少ないと、発電した電気を集める際にロスが発生してしまう。かといってやみくもに電極の数を増やすと、日陰の部分が増えて受光面積が狭くなり、発電量そのものが減ってしまう。
そこで電極の数を増やすと同時に、電極を細くして日陰の部分を減らし、出力を向上させたモデルが登場した。
そこで従来品では、横の電極を2本から4本に増やすと同時に、電極を細くして日陰の部分を減らし、出力を向上していた(図1)。
さらに210Wのモジュールでは、横のグリッド電極も細線化。具体的には、従来比で約20%細くしたことにより、セルの受光面積を増やして出力をアップさせた。
●図1 電極を増やして細線化したモジュールの構造(画像をクリックすると拡大します)
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また、電極をセルの背面に配置することで、受光面積をまったく損なわないように配慮している「バックコンタクト方式」を採用したモデルなども登場している。
バックコンタクト方式は、電極をすべてセルの背面に配置している。他社は電極を細くして受光面積をできるだけ増やしているが、電極をセルの裏側に回してしまえば、受光面積をまったく損なわなくて済むためである。
●図2 電極をセルの背面に配置したモジュールの構造(画像をクリックすると拡大します)
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太陽光発電システム(1)太陽光発電の基礎システム構成を押さえる

 

太陽光発電・電気理論 第1回

太陽光発電の基礎システム構成を押さえる

補助金制度固定価格買取制度など国からの手厚い支援が得られる「太陽光発電システム」は家電業界でも注目商材のひとつである。2012年からは住宅用のみならず、産業用としても導入が急速に伸びている。

そこで今回から太陽光発電システムに関する電気分野の基礎力を養い、系統立てた学習を目的として太陽光発電システムについて電気理論を中心に連載する。

まず、太陽光発電の基本的なシステム構成について説明する(図1)。

●図1 住宅用太陽光発電システム
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(1)太陽電池モジュール

太陽電池モジュールは、太陽の光を電気に変換する1枚のパネルである。なお、モジュールで発電する電気は「直流」である。

(2)太陽電池アレイと太陽電池ストリング

太陽電池モジュールを電気的に接続し、架台に設置した全体のことを「太陽電池アレイ」と呼ぶ。太陽電池アレイは、1つまたは複数の「太陽電池ストリング」から構成される。太陽電池ストリングとは、太陽電池モジュールを電気的に直列接続したブロックのことである(図2)。

●図2 太陽電池モジュールと太陽電池ストリング
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(3)接続箱

接続箱とは、太陽電池ストリングの出力をまとめて、後述するパワーコンディショナへ接続する機器である。パワーコンディショナに内蔵されている場合もある。接続箱には、太陽電池アレイをストリング単位で切り離す機能や、電気の逆流を防止する機能、雷から保護する機能などが備わっている(図3)。

●図3 接続箱の構成例(2 回路)と機能

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(4)パワーコンディショナ

パワーコンディショナは、太陽電池アレイが発電する直流電力を、家庭内で使用する交流電力に変換する。商用電力系統と連系して動作する製品は、商用電力系統に悪影響を与えないように保護装置を含む。商用の電力系統が停電した際には、パワーコンディショナに設けられた専用のコンセントから電力を供給することができる。これを「自立運転」と呼ぶ。

(5)分電盤

分電盤は、パワーコンディショナで直流から交流に変換した電力と、商用電力系統の接続点になる。太陽光発電専用のブレーカーを追加し、ブレーカー経由で商用電力系統に接続する。

(6)一般負荷

住宅内のコンセントに接続された電気製品や照明などのこと。分電盤から各部屋のコンセントを経由して、電力を消費する。

(7)買電用積算電力量計

従来の電力メーターである。電力会社から購入する電力を計測し、買電の量を表示する。

(8)売電用積算電力量計

太陽光発電を導入する際に、新しく設置する電力メーターである。電力会社に送る電力(逆潮流)を計測し、売電の量を表示する。

(9)外部モニター

パワーコンディショナが管理している情報などを使用して、発電量や使用電力量などをきめ細かく表示する。

(10)蓄電池

太陽光発電での余剰電力を蓄積し、必要時に供給する。天候による発電量の変動の吸収、夜間の電力供給などを行う。2013年2月現在はまだオプション機能であるが、徐々に蓄電池を接続したシステムが増えてきている。

(11)商用電力系統

電力会社から供給される電力である。


 

太陽光発電・電気理論 第2回

太陽電池セルの種類とその特徴

これまでの連載

連載の第2回として、太陽光発電システムにおいて電気を発電する要となる太陽電池セルの種類とその特徴についてまとめる。

太陽電池セルは、太陽電池の基本単位である10cm角程度の板のことを指す。太陽の光を電気に変換するモジュールはセルの集合体である。
現在、住宅用の太陽電池モジュールに使用されている主要なセルの種類を図1にまとめた。素材の種類によって変換効率や電気特性、温度特性などが異なり、さらに同じ素材でもメーカーによって差がある。

●図1 材料によるセルの分類

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1. 結晶シリコンによるセル構造

(1)シリコンについて
シリコンは電気的に「半導体」に分類され、「導体」と「絶縁体」の中間に位置する。「導体」とは抵抗値が低く電気を流しやすい金属などで、「絶縁体」とは抵抗値が高く電気を流しにくいガラスなどを指す。

特に「真性半導体」に分類される純粋なシリコン(4価の原子)に、不純物(ガリウムなどの3価の原子)を混入することでプラスの電気が移動しやすいp(positive)型シリコン、不純物(リンなどの5価の原子)を混入することでマイナスの電気が移動しやすいn(negative)型シリコンができる。
電気的に異なるp型とn型のシリコンを接合することで、太陽光を電気に変換する。

(2)結晶シリコンのセル構造
結晶シリコンによるセルの構造は、単結晶と多結晶で同じ構造をしている(図2a)。

上部に光を通すために薄いn型、下部に厚いp型を配置して構成されており、この間で太陽光を電気に変換して、表裏の各電極から電力を取り出す。シリコンの塊(インゴッド)をスライスしてセルを製造するので、セルは100~150㎜角になる。なお結晶シリコンは、高温で変換効率が低下する特性がある。

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▲シリコンインゴッド

2. 単結晶シリコン

そもそも「結晶」とは、分子や原子が一定のパターンで並んでいる物質のことである。

単結晶は、結晶のどの位置でも並びが一定の方向を向いている。シリコンでは、周囲の4つのシリコンと結合する(図3a)。

純度の高い結晶なので、シリコン本来の能力を発揮でき、多結晶などに比べて高い変換効率を得られる。その反面、シリコンの純度を高くするために、多結晶シリコンよりも製造コストが高くなる。

3. 多結晶シリコン

多結晶シリコンは、小さな単結晶シリコンをつぎはぎで合わせた構造で、場所により異なった方向を向いている(図3b)。
単結晶間をつぎはぎした結合部分で電気の一部が消失し、性能が低下する。そのため、単結晶に比べて発電効率は低くなる。

4. アモルファスシリコンとHIT

(1)アモルファスシリコン

アモルファスとは、結晶構造でなく、原子や分子が不規則に集まった状態のことである。アモルファスシリコンは、シリコンが乱れた状態で結合しており、シリコンの一部を水素と結合させることで安定した固体になる(図3c)。

アモルファスシリコンの特徴としては、

・結晶シリコンの1/200程度の薄さ(0.5μm以下)で光を吸収できるため、安価で、面積の大きい薄膜の太陽電池セルを製造できる
・変換効率は結晶シリコンよりも低い
・高温時、結晶シリコンよりも変換効率が低下しづらい
・結晶シリコンより低い光の波長で発電する

……などが挙げられる。

(2)HIT太陽電池の構造

HITとは「Heterojunction with Intrinsic Thin-layer」の略で、n型の単結晶シリコンと薄膜アモルファスシリコンを組み合わせた構造のことである(図2b)。
通常、p型とn型を合わせると接合面でプラスとマイナスの電気の一部が消失するが、不純物を含まないi型アモルファスシリコンを間に挟むことで電気の消失を防ぎ、変換効率を上げている。

また、発電できる光の波長が異なる単結晶シリコンと薄膜アモルファスシリコンを組み合わせることで、2つの異なる光の波長で発電でき、変換効率を上げている。
さらに薄膜アモルファスシリコンを利用することで、結晶シリコンの高温での変換効率の低下を改善している。そのほか、表裏が対象構造なので、温度変化によるソリなどの変形が生じにくいなどのメリットもある。

5. 薄膜シリコンハイブリッド

薄膜の多結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合せた構造で(図2c)、HIT同様に2つの異なる光の波長で発電できるほか、薄膜アモルファスシリコンによって高温での変換効率低下を改善している。

また、結晶シリコンに比べて使用するシリコンが少なく、低い温度で製造できるので低コスト化が望める。

さらに薄膜技術は、シリコンなどの材料を基板に付着させて製造するので、結晶シリコンでは製品化しづらい横長などの形状を実現できる。

6. 化合物系の太陽電池

化合物系の太陽電池は、高価なシリコンを使用せずに、薄膜技術によって少ない材料で製造できるので、製造コストを安くできる。

また、高温時にも変換効率が低下しづらい、結晶シリコンよりも幅広い光の波長幅で発電する、薄膜技術によって横長などの形状のセルを作れるなどの特徴がある(図2d)。

銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)で構成されたものを、頭文字を取って「CIS」と呼ぶ。さらに変換効率を上げるため、インジウムの一部をガリウム(Galium)に置き換えたもの「CIGS」と呼ぶ。

●図2 セルの断面図

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●図3 シリコンの結晶

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太陽光発電・電気理論 第3回

モジュールのスペックの見方を知る

これまでの連載

連載の第3回として、太陽電池モジュールのスペックの見方についてまとめる。

表は、太陽電池モジュールの仕様に記載される基本的な項目である。

●表 太陽電池モジュールの仕様の主な項目

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「変換効率」、「セルの種類」、「単体での電気的特性」、「動作時の電気的特性」に大別した。これらを順番に説明する。

1. 変換効率

太陽光エネルギーを1㎡あたり1kW(=1,000W)と想定して、このエネルギーを電力に何%変換できるかを表したのが「変換効率」である。温度条件は25[℃]で、式は次のようになる。

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現状の変換効率は10~20[%]ほどで、より変換効率の高いセルの開発が進められている。

またモジュールを選択する際には、単純に変換効率の高いモジュールを選ぶのではなく、モジュールの発電量や温度特性などの違い、アレイを設置できる面積、費用などを総合的に検討する必要がある。

2. 電気特性と測定条件

(1)太陽電池と通常の電源の違い

乾電池や商用電源は、一定の電圧を発生しようとする「定電圧源」と呼ばれ、電圧は一定だが、接続された機器により電流が変化する(図1a)。これに対して、太陽電池は一定の電流を流そうとする「定電流源」と呼ばれ、電流は一定だが、接続された機器により電圧が変化する(図1b)。

●図1 定電圧源と定電流源の電源

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図1の電流・電圧値は、電球の抵抗値を含めた「オームの法則」による。太陽電池が定電流源であることは、ストリングスの特性検査や、アレイの構成を理解する上で必要な知識なので覚えておこう。

(2)単体での電気特性

・公称開放電圧「Voc」

太陽電池モジュールに何も接続せずに出力電圧を測定した電圧値で、太陽電池モジュールで発生する電圧の最大値である(図2a)。「開放」とは、電気回路の2点を接続しない状態で「オープン」とも呼ぶ。

記号「Voc」の「V」は電圧記号、「oc」は「Open Circuit」の略で、Circuitは回路という意味である。

パワーコンディショナや蓄電池などの機器を接続した場合でも、電流が流れなければこの電圧が発生する。太陽電池モジュールを直列接続したストリングス構成では、太陽電池モジュールの枚数倍の電圧が発生する。ストリングスに接続する機器や配線材料は、この電圧で壊れないものを選定する必要がある。

・公称短絡電流「Isc」

太陽電池モジュール出力の両端を接続して測定した電流値で、太陽電池モジュールが発生させる電流の最大値である(図2b)。「短絡」とは、電気回路の2点を接続した状態で「ショート」とも呼ぶ。

記号「Isc」の「I」は電流の記号、「sc」は「Short Circuit」の略である。

太陽電池は定電流源なので、ストリングス構成にした場合でも、理論的には太陽電池モジュール1枚と同じ電流値になる。ストリングスからパワーコンディショナまでの経路でプラス線とマイナス線が短絡した場合を想定し、この電流値で壊れない機器や配線材料を選定する。

●図2 公称開放電圧と公称短絡電流

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(3)動作時の電気特性

・公称最大出力「Pmax」

太陽電池モジュールが発電することのできる最大の電力である。

記号「Pmax」の「P」は電力の記号、「max」は「maximum」(最大)の略である。電力は、次式の通りオームの法則より算出される。

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また、太陽電池モジュールの出力電圧と出力電流には「I-V特性」と呼ばれる関係があり、パワーコンディショナは、この「I-V特性」から得られる電圧値と電流値を調整して最大の電力を引き出す。そのため、公称最大出力時の動作電圧と動作電流もカタログに記載されている。

・公称最大出力動作電圧「Vmax」

モジュールが公称最大出力となる出力電圧である。

・公称最大出力動作電流「Imax」

モジュールが公称最大出力となる出力電流である。

・カタログから見た公称最大出力の計算

例えば、Qセルズの「PRO 240」の仕様表を見ると、公称最大出力(Pmax)=240.00[W]、公称最大出力動作電圧(Vmax)=29.46[V]、公称最大出力動作電流(Imax)=8.21[A]となっている。

これらのPmax、Vmax、Imaxがオームの法則に従っていることを確認してみよう。

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となり、カタログ値のPmax=240[W]とほぼ同じ値になる。

(4)公称値の測定条件

変換効率を含めた太陽電池モジュールの電気的な測定は、通常、太陽光を人工的に発生させるソーラーシミュレーターを用いて行う。これらは、JIS C8912(結晶系)、JIS C8933(アモルファス)などで細かく規定されている。

条件の概要は、カタログなどに次のように記載されている。

・放射照度:1,000[W/㎡]

・AM値:1.5

・温度:25[℃]

●放射照度

光のエネルギーの単位面積当たりの強さのこと。1,000[W/㎡]は、夏の晴天の12時頃の理想的な値である。

●AM値(Air Mass値)

通過空気量とも呼ばれる。太陽光が大気を通過する際には、大気中で反射、散乱、吸収があり、光の波長分布(スペクトル)が変化して地表に到達する。

緯度によって光が通過する大気の幅が異なり、AM値は大気の幅による光の波長分布の変化を表す指標である。標準気圧(1,013hpa)において、AM=1/sinθで求める。

なお、角度θは地表と光の角度である。大気圏外がAM=0、光が垂直に到達する場合がAM=1(θ=90°)、日本での年間平均はAM=1.5(θ≒42°)である(図3)。

●図3 AM値の概要

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●温度

シリコン系太陽電池などでは、温度変化が変換効率に影響するので、特定の温度25℃を規定して測定する。

3. I-V特性と電力

(1)I-V特性

図4aに、太陽電池モジュールの出力電流と出力電圧の関係を表すI-V特性を示す。測定原理は、太陽電池モジュールに接続した抵抗値(電流を制限する値)を0[Ω](短絡状態)から∞[Ω]に変化させた際の電流と電圧を計測してグラフ化する(図5)。なお「∞」は無限大の記号で、限りなく大きい値のことである。

●図4 I-V特性と最大出力Pmax

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●図5 I-V特性の測定方法

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以下に、図4aの各状態を説明する。

ア:0[Ω](短絡状態)では出力電圧は0[V]で、電流値は公称短絡電流Iscになる。

イ:抵抗値を徐々に上げた状態で、抵抗で発生する電圧降下により電圧は増加するが、定電流源なので、電流はほぼ一定の値になる。

ウ:さらに抵抗値を上げると、定電流源の能力が限界に達して、電流は急激に低下する。

エ:抵抗値が∞[Ω](開放状態)になると、電流は流れず、電圧は公称開放電圧Vocになる。

(2)I-V特性と最大出力

電力は、電圧と電流の積で求められる。そのため、I-V特性のグラフの軌跡上の電圧と電流の積が電力となり、横軸をI-V特性と同じ電圧にしてグラフ化すと図4bになる。このグラフで最大となる電力が最大出力Pmaxで、この点のI-V特性が最大動作電圧Vmaxと最大動作電流Imaxになる。

パワーコンディショナは、Pmaxの点で電力を取り出せるように電圧と電流を制御している。

太陽光発電システム(4) 「I-V 特性」を踏まえてストリングの値を実測

太陽光発電・電気理論 第4回

「I-V特性」を踏まえてストリングの値を実測

これまでの連載

連載の第4回として、太陽電池ストリングの測定についてまとめる。ストリングチェッカー(I-VカーブトレーサーまたはPVチェッカーなどとも呼ばれる)を使ってI-Vカーブ特性を見れば、施工やメンテナンス時に太陽電池アレイが正常か否かを速やかに判断することができる。

今回は、ある太陽光発電システムをストリングチェッカーの「IVH-400」で測定した場合を例に、その判断方法を見ていく。図1はIVH-400で測定したデータをパソコンに表示した画面である。

●図1 測定結果の表示レポート・例(画像をクリックすると拡大します)

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IVH-400のグラフは、出力の電流と電圧の関係を示すI-V 特性、および出力の電力と電圧の関係を示すP-V特性が重ねて表示され、下にはPmax[W]、Voc[V]、Isc[A]などの測定結果の数値が表示される。

このようにストリングチェッカーで測定した方が、テスターによる電圧測定よりも精度の高い評価を行える。

1. 直列/並列接続の考えが必要な部分

次に、太陽電池の直列接続と並列接続によるI-V特性の違いを説明する。

直列/並列接続の考え方は、太陽電池モジュールの接続構成の検討や、ストリングチェッカーでの測定結果を判断するために重要である。

ストリングは太陽電池モジュールを直列に接続したものなので、直列接続の考え方が必要になる。

一方、太陽電池アレイはストリングを接続箱で並列接続している場合が多くあり、並列接続の考え方が必要である。

2. 直列接続とI-V特性

太陽電池モジュールの直列接続において、出力の電圧、電流および電力は以下の通りである。

電圧=モジュール単体の電圧×モジュール枚数

電流=モジュール単体の電流

電力=モジュール単体の電力×モジュール枚数

そのため、直列接続でのI-V特性は、太陽電池モジュールの枚数倍で出力電圧が高くなる。また、出力電流は変化しない。さらに、以下の関係がある。

出力電力=出力電流×出力電圧

そのため、出力電圧が太陽電池モジュールの枚数倍になることで、出力電力も太陽電池モジュールの枚数倍になる(図2a)。

●図2 太陽電池モジュールの接続とI-V特性(画像をクリックすると拡大します)

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3. 並列接続とI-V特性

太陽電池モジュールの並列接続において、出力の電圧、電流および電力は以下の通りである。

電圧=モジュール単体の電圧

電流=モジュール単体の電流×モジュール枚数

電力=モジュール単体の電力×モジュール枚数

並列接続でのI-V特性は、直列接続と逆になる。出力電圧値は変化しないが、出力電流が太陽電池モジュールの枚数倍で多くなる。

それに応じて、出力電力も太陽電池モジュールの枚数倍になる(図2b)。

なお、ストリングでの並列接続は、太陽電池モジュールを1つのストリングに置き換えて計算する。

4. 結晶系太陽電池の放射照度特性

カタログ値は、放射照度1,000[W/m]での電気的特性を示しており、これは夏の理想的な値である。実際の運用時は、この値より低い場合がほとんどである。

照度が減少すると、出力電流も比例して減少する。出力電流が減少すると、出力電力も減少する(図3a)。

●図3 環境条件とI-V特性の概要(結晶系シリコン)(画像をクリックすると拡大します)

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5. 結晶系太陽電池の温度特性

カタログ値は、25[℃]での電気的特性を示している。実際のデータは、季節による温度変化などで変動する。

温度が上がると出力電圧が減少し、下がると出力電圧が増加する。つまり温度と出力電圧は、反比例の関係になる。出力電圧が減少すると、出力電力も減少する(図3b)。

6. 曲線因子(FF:Fill Factor)

曲線因子(FF)は、太陽電池の品質を評価する重要な値で、製造工程でも使用される。

FFは、開放電圧Vocと短絡電流Iscの積で求められる理想的な出力Pt[W]に対して、現実の最大出力Pmax[W]がどれだけ近いかの割合である。

I-V特性においては、IscとVocで囲まれたPt を頂点とする四角形の面積と、最大出力Pmaxを頂点とする四角形の面積の比となる。PmaxがPtに近ければ近いほど、品質が高いことになる(図4)。

●図4 曲線因子(FF)とI-V特性(画像をクリックすると拡大します)

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一般に新規導入の場合、FFの値が0.7程度あれば良いとされている。太陽電池を電気回路として見ると、並列抵抗と直列抵抗が含まれており、これらが経年変化などで劣化するとFFの値も低下する。

そのため、太陽電池ストリングの定期検査の際に、前回のFFと比較することで品質が維持されているかどうかを確認できる。

7. IVH-400による測定結果(例)

(1)測定対象と測定値

今回測定対象にしたストリングは「Q.PRO 240」(多結晶シリコン)の太陽電池モジュール6枚を直列接続した構成だった。カタログ値と測定結果、測定した際の条件を表に示す。

●表 「Q.PRO 240」のストリング(6枚)の電気的仕様と測定結果(画像をクリックすると拡大します)

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なお表に記載した照度と温度は隣の建物で測定した数値で、さらに測定時から数分後の値だったため、厳密ではない。また、太陽電池モジュールの表面がホコリなどにより汚れていたので、若干性能が低下した状態だった可能性がある。あくまで目安である。

(2)カタログ値との比較

測定したストリングは太陽電池モジュール6枚の直列接続なので、仕様からの値は、カタログ値のVocとVmaxを6倍に換算した。同様に電力Pmaxも6倍に換算した。

・開放電圧Voc……カタログ値223.6[V]に対して、測定値は203.4[V]。91[%]の値だった。ほぼ直列数倍の値になった。

・短絡電流Isc……カタログ値8.79[A]に対して、測定値は5.81[A]。この測定値を、放射照度1,000[W/m2]に換算した。

日射照度と電流には比例関係があるので、以下の概算式で求められる。

Isc=5.81[A]×(1,000[W/m2]/650[W/m2])

=8.93[A]

カタログ値と近い値になった。

・最大出力Pmax……カタログ値1,440[W]に対して、測定値は890[W]。この測定値を、放射照度1,000[W/m2]に換算した。

Pmax=890[W]×(1,000[W/m2]/650[W/m2])

=1,323[W]

カタログ値に近い値になった。

・曲線因子FF……測定値は0.73なので、正常に機能していると判断できた。また、測定したVoc、Isc、Pmaxからも下記のように計算でき、測定結果と一致した。

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太陽光発電システム(5) 複数のストリングを一つにまとめる「接続箱」の役割

 

太陽光発電・電気理論 第5回

複数のストリングを一つにまとめる「接続箱」の役割

これまでの連載

接続箱は、太陽電池ストリングをまとめてパワーコンディショナへ接続する機器である。今回は、接続箱の役割と、接続箱に設置するSPDによる雷対策についてまとめた。

1. 接続箱の概要

接続箱には、主に以下の3つの機能がある。
・ストリングの切り離し
・ストリングへの電流の逆流を防止
・雷からシステムを保護

一般的な回路を図1に示した。各ストリングからの入力は、開閉器を経由して1つにまとめられ、パワーコンディショナへの出力になる。
また、各ストリングへの配線にダイオードを接続することで、電流が逆に流れることを防止している。
さらに、各ストリングからの配線に、雷からシステムを保護するSPD(サージ防護デバイス)が接続されている。

●図1 接続箱の回路(2回路)と機能(画像をクリックすると拡大します)

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ここからは、ある太陽光発電システムの接続箱(Qセルズ・QCJ-BX-KR3)を例に挙げながら、それぞれの役割について詳しく解説する。

2. 開閉器によるストリングの切り離し

下記の写真は、接続箱の中にある開閉器とその周辺である。この接続箱は、3つの開閉器(3回路)を持つタイプで、3つのストリングまで接続できる。

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▲接続箱の中。左2つを使用中(画像をクリックすると拡大します)

この太陽光発電システムのストリングは2つで、左と中央の開閉器を使用しており、それらだけONにしている。開閉器の下側の端子は各ストリングに接続され、上側の端子はまとめられて、パワーコンディショナに接続されている。

開閉器は、ストリングをシステムから切り離す際に使用する。主な用途としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ストリングの電気特性測定や点検
(2)故障したストリングを切り離して、正常なストリングだけでの運転
(3)故障したストリングの修理

また次の写真は、前回説明したストリングチェッカーによる測定時で、上記(1)の例である。左の開閉器をOFFにした後、ストリング側の端子に2本の測定ケーブルを入れて、ストリングの電気特性を測定している。

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▲左の開閉器をOFFにして測定中(画像をクリックすると拡大します)

このとき、中央の開閉器はONで発電を行っている。なお、開閉器をONにした状態での測定では結果を得ることができず、システムが故障する可能性もあり、しかも危険である。
点検などの作業は、必ず開閉器をOFFにして行うようにする。

3. ストリングの逆流防止

逆流とは、影などにより出力電圧が低下したストリングに他のストリングから電流が流れ込む状態で、出力低下やモジュール故障の原因となる可能性がある。
分かりやすいように、電池に置き換えて説明する。同じ電圧の電池を並列接続したときには、電池から同じ量の電流が負荷に流れる正常な状態である(図2a)。電流は、電圧の高い方から電圧の低い方へと流れる。各電池の電圧に差がないので、バランスが取れている状態である。
しかし片方の電池の電圧が下がると、高い電圧の電池から低い電圧の電池へと電流が流れる(図2b)。これが逆流で、電池を壊す可能性があり、出力電流も減少する。

●図2 逆流と逆流防止ダイオード(画像をクリックすると拡大します)

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この逆流を防止するために使用しているのが、ダイオードである。太陽電池にも利用されているp型シリコンとn型シリコンを接合した電子部品である(図3a)。
ダイオードは、加える電圧の方向によって電流を流したり(図3b)、電流を止める(図3c)性質があり、加える電気の向きで自動的に動作するスイッチのような機能を持る。このように電流を一定方向にしか流さない性質を、整流作用と呼ぶ。

●図3 ダイオードと特性(画像をクリックすると拡大します)

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逆流を防止するために、各電池に対して正常に電流が流れる方向で、ダイオードを直列接続する。図2cは正常な状態での電流を示しており、図2d は一方の電池の電圧が下がった状態である。ダイオードによって、図2bのような逆流は発生しない。
図2の電池を太陽電池ストリングに置き換えれば、接続箱での回路になる。
また接続するダイオードは、向きが同じであれば電池の+側でも-側でもかまわない(図4)。接続箱によっては、ダイオードの位置が-側の配線に接続されている。

●図4 ダイオードの位置と向き(画像をクリックすると拡大します)

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4. SPD による雷保護

(1)直撃雷と誘導雷(図5)
雷は、大気中で大量に電気(電荷)が分離し、ある時点で分離した電気が元に戻ろうとして放電する現象である。雲と地面での放電を、落雷と呼ぶ。落雷は、落雷を受ける側から分類すると直撃雷と誘導雷に分類される。

●図5 直撃雷と誘導雷(画像をクリックすると拡大します)

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直撃雷は、建物の外部や近傍の地面などに落雷することで、数万アンペアなどの大電流が瞬間的に流れる。
誘導雷は、落雷による大電流が干渉(電磁誘導)によって屋外の電線などに「雷サージ」(雷による瞬間的な異常電圧)を発生させる間接的な雷である。誘導雷は、直撃雷ほど大きな電流ではありませんが、雷サージは機器を壊すのに十分な大きさになることがある。
住宅に直撃雷が落ちるのは、数百年に1回との試算もあるほど、わずかな確率である。

また、建築基準法の第33条に「高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。」とあり、高さ20メートル以下である住宅には避雷針などでの対策を義務付けていない。これにより、直撃雷の対策はしないのが一般的でである。

一方で、住宅から数kmの範囲への落雷は、年に数回発生する可能性があるため、誘導雷への対策は必要である。
雷対策は保険のようなもので、落雷が発生したときに価値が分かる。そのため、現状では十分な対策をしないこともあるようだが、他社との差別化のためにも、雷対策について理解しておくことは重要である。

(2)SPD(Surge Protective Device)
SPDは、落雷で発生する異常電圧、異常電流から機器を保護する。雷サージは、屋外配線で発生します。雷サージによる異常電圧を一定値以下にするために、異常電圧の発生する間(図6aでは配線と地面)にSPDを接続する。なお、地面は接地(アース)である。
雷サージがSPDを通過するときに、SPDが一定電圧以上のエネルギーを吸収して許容電圧以下にすることで、機器の故障を防止する。

実際の雷サージは、ストリングから入力される2線間、各線と大地間の3カ所に発生する(図6b)。それぞれの雷サージを放電させるために、3カ所にSPDを接続する。

●図6 雷サージ発生とSPD配置(画像をクリックすると拡大します)

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5. 接続箱の設置場所

点検や修理の際に、開閉器でストリングを切り離すので、作業しやすい場所に設置する。

接続箱には屋内型と屋外型があり、壁面などに設置する屋外型であれば、住宅に入ることなく開閉器を操作できる。

太陽光発電システム(6)ストリングの出力電圧を最適化する「昇圧器」

 

太陽光発電・電気理論 第6回

ストリングの出力電圧を最適化する「昇圧器」

これまでの連載

昇圧器は、各ストリングの出力電圧をそろえるために使う機器である。今回は、昇圧器の役割と仕様の見方をまとめる。

1. 昇圧器の必要性

太陽電池アレイの各ストリングは、基本的に同じ枚数のモジュールで構成する。これは各ストリングの出力電圧を同じにする必要があり、ストリングの出力電圧は直列接続するモジュールの枚数で決まるためである(図1a)。
もし、一部のストリングのモジュール枚数が少ないと、そのストリングだけ出力電圧が低下して、動作しなくなる(図1b)。

この問題を解決するために、「昇圧器」がある。昇圧器は、ストリングの出力電圧を昇圧し、最適な出力電圧にする機器である(図1c)。
なお、昇圧器は自動的に最適な出力電圧にする「自動昇圧タイプ」が一般的だが、入力電圧に対する出力電圧を手動で設定するタイプもある。
●図1 ストリング構成と昇圧器(画像をクリックすると拡大します)
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2. 昇圧器の導入例

では、昇圧器をどのように導入すればいいのか。
出力200[W]、動作電圧20[V]の太陽電池モジュールが最大9枚(5+4枚)設置できるエリアで、2ストリング構成の例を考えてみよう。

(1)昇圧器がない場合(図2a)
各ストリングの出力電圧を同じにする必要があるため、各ストリングのモジュールは4枚ずつ使用。合計8枚分の電力を得ることができる。各ストリングの電圧はモジュール単体の4倍である80[V]になる。出力は1,600[W](1.6[kW])である。

(2)昇圧器を導入した場合(図2b)
昇圧器を導入することで、モジュール5枚のストリングとモジュール4枚+昇圧器のストリングになり、約9枚分の電力を得ることができる。モジュール5枚のストリングは、電圧が100[V]である。
昇圧器によって、モジュール4枚による電圧80[V]を1.25倍し、モジュール5枚のストリングと同じ100[V]にすることで、正常にシステムを動作させることができる。

(3)昇圧器の変換効率と出力(図2b)
昇圧器は、出力電圧を最適にする電子回路などで構成されている。回路を動作させる電力にはストリングの出力を使用するので、昇圧器が出力する電力は若干減少する。これを表すパラメータとして、変換効率(単位は[%])がある。

昇圧器の変換効率を95%と仮定すると、モジュール4枚のストリング出力は800[W]なので、電力は800[W]×0.95=760[W]になる。

●図2 昇圧器の導入例(画像をクリックすると拡大します)

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3. 昇圧器の仕様

ある太陽光発電システムに採用している昇圧回路付接続箱(Qセルズ製、QCJ-BXSKR3)の主な仕様を例に、それぞれの見方を解説する。

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▲昇圧回路付接続箱(Qセルズ製、QCJ-BXSKR3)

●表 昇圧回路付接続箱(Q セルズ QCJ-BX-SKR3)の仕様(画像をクリックすると拡大します)

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(1)最大入力電圧
昇圧器に入力できる電圧の上限である。

(2)運転範囲入力電圧
正常に昇圧動作が行われる入力電圧の範囲である。ストリングの開放電圧が範囲内になるように、直列モジュール数を決める必要がある。

(3)最大入力電力
昇圧器に入力できる電力の上限である。
例えば、ある太陽光発電システムのモジュールは、公称最大出力が240[W]なので、1,125[W]÷240[W]=4.58枚となり、計算上ではモジュール4枚までのストリングを接続できることになる。

(4)昇圧回路定格出力
昇圧器が連続して出力できる最大の電力である。

(5)昇圧回路 電力変換効率
入力電力に対する出力電力の割合である。条件によって変化する可能性があるので、条件が記載されている。

(6)最大直列モジュール数
最大4枚となっており、最大入力電力の条件からだと考えられる。また、昇圧器を使用しないストリングよりも少ない枚数である必要がある。

(7)方式
「自動昇圧」とは、昇圧器の出力電圧を他のストリングの出力電圧に自動的に合わせる機能である。また「最大電力追従制御」はMPPT(Maximum Power Point Tracking)とも呼ばれ、ストリングのI-V特性から最大の電力を引き出す制御方式で、パワーコンディショナの入力で使用されている。

さらに、他社の接続箱の仕様には、次のような項目がある場合がある。

・最大入力電流:正常に動作する入力電流の最大値である。

・最大出力電圧:動作時の出力電圧の最大値である。ほかのストリングの出力電圧は、この値以下にする必要がある。

・最大出力電流:出力電流の瞬間における最大値である。

・最大出力電力:出力電力の瞬間における最大値である。

・昇圧範囲:出力電圧を、入力電圧の何倍昇圧できるかを倍率で表す。下限と上限がある。

太陽光発電システム(7) パワーコンディショナに搭載されている機能とは

 

太陽光発電・電気理論 第7回

パワーコンディショナに搭載されている機能とは

これまでの連載

パワーコンディショナには、太陽電池アレイが発電する直流電力を、家庭内で使用する交流電力に変換する役割がある。
連載第7回では、パワーコンディショナの役割や機能について詳しく解説する。

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▲パワーコンディショナの設置例

1. パワーコンディショナの概要

パワーコンディショナは、太陽電池で発電された直流電力を、商用電源である交流電力に変換する装置。いわば電子回路の集合体である。
平常時には、電力会社から受電した電力系統と接続する「系統連系機能」によって、ユーザー宅の電力消費や、「逆潮流」による「売電」を行う。
また、停電時には「自立運転機能」により「停電用(自立出力)コンセント」から電力を供給できる。
これらを効率よく安全に機能させるために、以下の機能が働いている。

(1)日射量に応じて最適な動作を制御
・自動運転機能
・MPPT(最大電力追従機能)

(2)電力系統を保護するための制御
・自動電圧調整機能
・単独運転防止機能

(3)異常を検出して電力系統を切り離す制御
・系統連系保護機能

また、「電力の見える化」のために発電量などを表示する「表示モニター」のインターフェースを持つものが一般的である。受電側の電流を測定する電流センサーを追加することで、外部モニターに売電と買電の電力量を表示できる。

2. パワーコンディショナの機能

パワーコンディショナの主な機能と接続関係を、図1に示す。

●図1 パワーコンディショナの構成(画像をクリックすると拡大します)

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(1)コンバーター(図1の回路図において昇圧回路として機能)
太陽電池の直流出力を、一定値の直流電圧に変換する昇圧回路である。
出力電圧を電圧センサーで監視しながら、出力電圧が一定値になるように制御する。また、次に説明する「MPPT」の制御により、太陽電池から最大電力を取り出せるようになっている。
なお、出力電圧が一定なので、太陽電池の発電電力に比例して出力電流が変化する。

(2)MPPT(Maximum Power Point Tracking)
太陽電池の発電電力P、電圧V、電流Iは、

P=V×I

の関係があり、MPPTはセンサーで計測した電圧Vと電流Iを入力として、リアルタイムに電力Pを算出する。
また、太陽電池はP-V特性を持ち、電圧Vにより発電電力Pが変化する(図2)。
この特性を利用して最大電力Pmaxを取り出すために、コンバーターは太陽電池の電圧Vを変える機能を持つ。
これらの機能を用いて、MPPTは太陽電池の電圧Vを常に微小変化させながら、最大出力Pmaxのポイントで太陽電池が動作するようにリアルタイムで制御している。

●図2 P-V特性とMPPT

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(3)自動運転停止機能
センサーで計測した太陽電池の電圧Vを入力として、電圧Vが運転可能範囲になると、自動的にパワーコンディショナの運転を開始する(早朝など)。
同様に、電圧Vが範囲外になれば、運転を停止する(夕方など)。
そのため、利用者が運転の開始・停止操作を行う手間は必要ない。

(4)インバーター
コンバーターで一定の直流電圧にした電力を、電力系統の交流電力に変換して出力する。
また、制御回路の各種機能を実現するために、電圧、電流やこれらの周波数、位相(電力系統の電気波形との時間的なズレ)などを制御できるようになっている。

(5)自動電圧調整
電力会社との責任分界点である「受電点」の電圧は、品質を維持するために範囲が規定されており、以下の範囲内で電力を供給している。

●標準電圧:維持すべき電圧範囲
AC100[V] AC101±6[V]
AC200[V] AC202±20[V]

パワーコンディショナを電力系統に接続して売電を行う系統連系では、逆潮流によりこの範囲を超える可能性がある。これを回避するために、「自動電圧調整機能」がある。
センサーによって電力系統の電圧を監視し、電力系統の電圧が規定電圧の範囲になるように、インバーターの出力を制御する。

(6)系統連系保護機能
系統連系では、電力系統やパワーコンディショナに異常が生じた際、速やかにパワーコンディショナを電力系統から切り離して安全を確保する「系統連系保護機能」を持つことが、電気設備の技術基準で義務付けられている。

系統連系保護機能には、以下のものがある。

■電圧の異常を検出して切り離す機能
・OVR(Over Voltage Relay:過電圧継電器)
・UVR(Under Voltage Relay:不足電圧継電器)

■周波数の異常を検出して切り離す機能
・OFR(Over Frequency Relay:周波数上昇継電器)
・UFR(Under Frequency Relay:周波数低下継電器)

これらは、異常を検出すると、系統連系リレーによって電力系統とパワーコンディショナを切り離す。
また動作パラメータは、切り離し動作を行う条件となる整定値、検出してから動作を完了するまでの時間である整定時間がある。

例として、下記にオムロンのパワーコンディショナ・KP55F-Nの工場出荷時の設定値を示す。

●表 オムロンのパワーコンディショナ・KP55F-NのOVR、UVR、OFR、UFR(工場出荷時)

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(7)単独運転防止機能
■単独運転とは
電力系統の停電が発生したときに、パワーコンディショナの出力電力と住宅内の消費電力が同一な場合、パワーコンディショナは電力供給を継続し、出力電圧と周波数は変化しない。
この状態を「単独運転」と呼び、パワーコンディショナの系統連系保護機能では異常を検出できない。
単独運転によって停電時の配電線に電気が供給されるので、保守者に危害を加える可能性があります。そのため、単独運転を停止させる「単独運転防止機能」が必要となる。

■単独運転防止機能
単独運転の検出は、以下の2つの方式を組み合わせて行う。

・受動方式:単独運転への移行時に発生する電力系統の電気的変化をとらえることで検出

・能動方式:正常運転時には検出できず、単独運転時にだけ検出できる小さな電気的変動をインバーターの出力に発生させておき、この出力の変動を捉えることで検出

これらの2つの方式により、単独運転を検出すると、系統連系リレーによって電力系統とパワーコンディショナを切り離す。

(8)自立運転機能
停電時に系統連系リレーをOFFし、自立運転リレーをONすることにより、自立出力端子(U1、V1)よりAC100[V]を供給する。

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▲パワーコンディショナには側面などに自立運転用のコンセントがある(画像をクリックすると拡大します)

(9)出力端子の過電圧保護
一定電圧以上の電気から保護する「バリスタ素子」などを系統連系の各端子間に接続し、電力系統の過電圧からパワーコンディショナを保護する。

太陽光発電システム(9)パワーコンディショナと分電盤の接続時の注意点

太陽光発電・電気理論 第9回

パワーコンディショナと分電盤の接続時の注意点

これまでの連載

前回の連載第8回では、パワーコンディショナのスペックについて説明した。今回は、パワーコンディショナと分電盤の接続時の注意点について紹介する。

1. 2つの接続方式

パワーコンディショナの交流出力は、太陽光発電用の遮断器(ブレーカー)を介して、分電盤内の商用電力系統に接続する。接続方式には、A とB の2種類がある(図1)。

なお図1は、単相3線電源の単線図(機器の接続関係を示す図)である。接続方法ごとに使用される遮断器の種類が決められており、それを表に示した。接続方式は、ユーザーの現状を把握した上で、メーカーや電力会社などと相談して選択する。

●図1 パワーコンディショナと分電盤の接続(画像をクリックすると拡大します)

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2.遮断器の種類

遮断器の種類について説明する。

(1)配線用遮断器と漏電遮断器

配線用遮断器は、過電流を検知して自動的に電気を切り、住宅内の電気設備を保護する。過電流には過負荷(電気の使い過ぎ)と短絡(電源線間の接触など)がある。

また保守などの際には、手動による切り離しも行う。遮断器のS(Source)側端子は電源に接続し、L(Load)側端子は負荷(電気製品)側に接続する。

漏電遮断器は、配線用遮断器の機能に加え、漏電を検知して自動的に電気を切る。漏電とは、電気が配線や電気機器内部以外へ漏れる事故の状態のこと。

例えば、洗濯機などの電気機器の外部の金属部分へ漏れるケースなどがある。人が触ることにより、感電や近くの可燃物に引火する火災事故などが発生する可能性がある(図2)。

●図2 漏電の例(画像をクリックすると拡大します)

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単相3線式において、正常時はL1、N、L2の3線に行き来する電流の総和がゼロになる。漏電が起きると他の経路へ電流が漏れるので、電流の総和がゼロでなくなる。漏電遮断器は、この電流の変化を検知して、漏電を検出する仕組みになっている。

(2)遮断器の極数(P)と素子数(E)

極数(P:Pole)は電線を接続する端子の数、素子数(E:Element)は電気を遮断する回路の数を表す。表の3P2E型は単相3線を接続でき(3P)、中性線(N)以外の第1相(L1)と第2相(L2)の電力線2本に遮断器が入る構造(2E)である(図3)。

●図3 遮断機の極数(P)と素子数(E)(画像をクリックすると拡大します)

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(3)中性線欠相保護

単相3線式の配線において、中性線(N)が断線した状態を「中性線欠相」という。

中性線欠相になると、電気機器に100[V]以上の過電圧が加わり、機器を劣化・故障させる可能性があります。同様に100[V]以下の電圧が加わる可能性もある(図4)。

正常時、N-L1とN-L2の電圧は、各々AC100[V]に固定されています(図4a)。

N(中性線)が切断されると、L1側とL2側の機器が直列に接続されてAC200[V]が印加された状態になり、各機器に印加される電圧はAC100[V]ではなく消費電力に応じた電圧になる(図4b)。

中性線欠相保護は、各線間の電圧を監視することで中性線欠相を検出し、電気を遮断する。

●図4 中性線欠相の状態(画像をクリックすると拡大します)

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(4)逆接続可能型

遮断器内の異常検出回路はL側(負荷側)に置かれ、異常時にS側(電源側)と切り離されることで守られている。しかし太陽光発電を導入すると、L側にも電源(インバーター)が接続されているため、逆接続不可能型の遮断器だと、異常検出回路がインバーターの異常電圧などで故障する可能性がある。

逆接続可能型の遮断器は、L側に電源を接続しても故障しないタイプである。

太陽光発電用遮断器は、L側に電源(パワーコンディショナ)が接続されるので、このタイプを使用する。

3.分電盤について

(1)分電盤

各種遮断器などが納められている。玄関や洗面所などの壁に取り付けられており、引込線からの電気を各部屋や各電気製品に配分する。

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▲太陽光発電用分電盤(画像をクリックすると拡大します)

(2)契約遮断器

電力会社の設備で、住宅の契約アンペア数に応じた配線遮断器が取り付けられる。
過電流を検知して自動的に電気を切り、電気設備全体を守ります。また、住宅内メンテナンス時には、手動で切り離しを行う。

(3)主電源漏電遮断器

住宅内での漏電を検知して自動的に電気を切り、感電事故や火災を防ぐ。

(4)太陽光発電用遮断器

過電流などから太陽光発電システムと住宅内の電気設備間を保護する。保守などによる太陽光発電システムの切り離しにも使用する。

(5)分岐用遮断器

分岐用遮断器を経由して、住宅内の各部屋などに電気を分配する。分配先の過電流を検出して電気を切ることで、停電の範囲を狭い範囲にとどめる。

4.接続方法Aと接続方法B

(1)接続方法A(図1参照

「1次送り連系」とも呼ばれ、パワーコンディショナの交流出力を主電源漏電遮断器の電源側(1次側またはS 側)に接続する方法で、分岐用遮断器の回路と分離した構成である。

主電源漏電遮断器のL側に電源(パワーコンディショナ)が接続されていないので、既設遮断器をそのまま利用することができる。

また、太陽光発電用遮断器は契約ブレーカーに接続されるので、漏電遮断器が必要である。

(2)接続方法B(図1参照

「2次送り連系」とも呼ばれ、パワーコンディショナの交流出力を主電源漏電遮断器の負荷側(2次側またはL 側)に接続する方法で、分岐用遮断器の回路に含まれる構成である。

主電源漏電遮断器は、L側にパワーコンディショナが接続されるので、「逆接続可能型」を使用する必要がある。

太陽光発電システム(10)電圧上昇抑制機能

太陽光発電・電気理論 第10回

電圧上昇抑制機能

これまでの連載
前回の連載第9回では、パワーコンディショナと分電盤の接続時の注意点について説明した。今回は、電圧上昇抑制機能について紹介する。

1.逆潮流における電圧上昇抑制機能

(1)概要

「電圧上昇抑制機能」は、太陽が出ている昼間にもかかわらず、余剰電力の逆潮流ができにくい(またはできない)状態になることである。

(2)発生メカニズム

(イ)電圧と電流の関係

まず、電圧と電流の関係を確認しておく。系統連系では、受電点側の電源とパワーコンディショナの電源を対向で接続した回路になる。

●図1 電圧と電流の関係(画像をクリックすると拡大します)

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この場合、電圧の高い電源から電圧の低い電源側へと電流が流れる(図1a)。定電圧電源は電流を吐き出すだけでなく、出力電圧を維持するために電流を吸い込む場合もある。
この電流量I[A]は、電源間の電圧差V[V]と、電源間の配線の抵抗値R[Ω]より、オームの法則

I[A]=V[V]÷R[Ω]

として求められる。

電気を水に例えて考えると、分かりやすい(図1b)。電源をタンク、電源の出力電圧をタンクの水位、電流を水流とする。
水位の異なるタンクをパイプで接続すると、水位の高いタンクから水位の低いタンクへと水が流れる。水位の差(電圧の差)が大きいほど、またパイプが太い(抵抗値が低い)ほど、水流(電流)は多くなる。

なお、タンクを定電圧電源と同じ動きとした場合、タンクは水位を常に一定にするためにタンク内の水の量を制御する。

(ロ)受電点の電圧規定

受電点の電圧は、AC101±6[V](AC95~107[V] の範囲)と「電気事業法施行規則(電圧及び周波数の値)第四十四条」で定められている。

さらに受電点の電圧測定方法は、各時刻における30分間の平均(移動平均)値である(図2)。受電点の電圧が一時的にAC107[V]を超えても、その時刻を含む30分間の平均値が常にAC107[V]以下であればよく、一時的にAC107[V]より高い電圧になる場合もある。

●図2 受電点での移動平均値(画像をクリックすると拡大します)

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(ハ)逆潮流の状態

パワーコンディショナは、発電した電力を電流として送り出すため、出力電圧を制御して受電点より高い電圧に設定している(図3a)。出力電圧値は、余剰電力を逆潮流として流す電流量に応じて決められる。

●図3 電圧上昇抑制問題(画像をクリックすると拡大します)

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(ニ)電圧上昇抑制問題の状態

受電点と出力電圧の電圧が同じになると、電気は流れない。受電点の電圧がAC107[V]になった場合、パワーコンディショナが最大電圧であるAC107[V]を出力しても逆潮流は行われず、分電盤経由で住宅内設備への電力供給だけになる(図3b)。

さらに30分間の平均値(移動平均)が条件なので、受電点の電圧が一時的にAC107[V]を超えた場合、住宅内設備への電力供給が電力会社からの給電だけとなり、パワーコンディショナからの電力供給ができない可能性もある。

なお住宅内配線での電圧降下(電圧の低下)、受電点の電圧値が30分の移動平均であることなどを考慮して、実際のパワーコンディショナの工場出荷時の設定は、最大電圧AC109[V]などとされている。

2.受電点の電圧変動

(1)送電線と受電点の電圧
電力会社から供給される電力によって、受電点の電圧変動が起こる。送電線路は抵抗値(インピーダンス)があるため、オームの法則より、電流量に応じて送電線路で電圧降下が発生する。そのため電力会社が送り出した電圧よりも、受電点の電圧は低くなる。

また電力会社からの送電線路が長いほど電圧降下が大きくなり、受電点の電圧は下がる。

(2)電圧変動の大きい地域
受電点の電圧変動が大きいのは、大量の電気を消費する工場やオフィスビル街に隣接した地域である。このような地域では、工場やオフィスの稼働時に大量の電力を消費する。そのため、稼働時には送電線に流れる電流が多く、電圧降下も大きくなる。

これを回避し、受電点の電圧を規定値内に収めるために、電力会社は高めの電圧で送り出している(図4(a))。
昼休みなどで工場やオフィス街での電力消費が低下すると、送電線を流れる電流が減少し、電圧降下が小さくなる。

これによって受電点の電圧が上昇します(図4(b))。上限値が30分の移動平均なので、一時的に107[V]を超える可能性もある。休日や終業時も同様である。

電力会社は安定した電力供給のために努力しているが、巨大な発電設備や送配電設備のきめ細かな制御、利用者の消費量の把握などには限界があるとも考えられる。

●図4 工場停止による受電点の電圧上昇(画像をクリックすると拡大します)

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(3)対策の概要
対策として「配電線の張り替え」や「トランスの移動」などによる送電ルートの変更などがある。これらは電力会社の財産なので、電力会社の協力を得て進める必要がある。

3.住宅内の問題と対策

(1)概要
住宅内でも、受電点~分電盤、分電盤~パワーコンディショナ間での電圧降下があり、電圧上昇抑制問題の原因となる可能性がある。

(2)住宅内の電源幹線
住宅内の電源の幹線が細いほど、また長いほど抵抗値が高くなり、パワーコンディショナから分電盤への逆潮流の電流による電圧降下が大きくなる(図5)。法定で定められた下限に近い太さの幹線を使用している場合には、注意が必要である。対策は、幹線を太くすることである。ただし住宅に応じて交換費用が異なるので、現地調査の時点で幹線を調べて、必要なら提案に盛り込むべきである。

●図5 幹線の太さによる電圧降下の違い(画像をクリックすると拡大します)

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(3)住宅への引込み線
(2)と同様に、引込み線による電圧降下の可能性もある。対策としては、引込み線を増強することであるが、引込み線は電力会社の財産なので、電力会社の協力を得て進める必要がある。

(4)分電盤でのインバランス調整
計算しやすい値での概略モデルを図6で説明する。分電盤では、単相3線式の幹線を中性線(O)と相線(U またはW)による単相2式の分岐として住宅内に配線している。
図6(a)~(d)に示した電流・電圧値と方向は、交流信号の瞬間の値である。また、パワーコンディショナの最大出力電圧はAC107[V]とする。

●図6 負荷のバランス(画像をクリックすると拡大します)

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(イ)各相の消費電力が均等な場合

U-O 間とW-O 間に接続された電気製品の消費電力が同じであれば、U-O 間とW-O 間の電圧は同じになり、U-O 間とW-O 間の電圧は共にAC107[V]まで上昇させることが出来る(図6a、b)。
また、中性線(O)には電流が流れない。このときの逆潮流は、U-O 間がAC15[A]、W-O 間がAC15[A]で、合計AC30[A](AC100[V]なので3[kW])となる。

(ロ)各相の消費電力が不均等な場合

極端な例として、U-O 間に(イ)と同等の電気製品を接続した例で説明する(図6c、d)。
電気製品経由の戻り電流は、中性線を流れて受電点のW-O 間に流れ込む。これにより、U-O 間とW-O 間の電圧に差が出てくる。

受電点の電圧がAC100[V]では(図6c)、パワーコンディショナはW-O 間がAC105[V]で正常に動作し、逆潮流はU-O 間がAC10[A]、W-O 間がAC20[A]で合計AC30[A]となる。

受電点がAC103[V]になると(図6d)、パワーコンディショナは出力電圧を上げるが、W-O 間がAC107[V]になった時点で、電圧上昇を止める。逆潮流はU-O 間がAC5[A]、W-O 間がAC15[A]で合計AC20[A]となる。AC10[A]分の逆潮流ができなくなり、これを逆潮流させるにはW-O 間をAC108[V]にする必要がある。

(ハ)対策

対策としては、図6a のように各相の消費電力を極力均等にすることである。状況を把握するために、各種電力状況を測定・記録できるデータロガーを分電盤に接続し、1週間程度記録したデータを解析している業者もいる。
季節によって状況が変わるため注意が必要で、発電が多く、住宅内の電力消費が下がる春と秋が適しているといわれている。

太陽光発電システム(11)事故を防ぐ「接地」と接地後の完了検査

太陽光発電・電気理論 第11回

事故を防ぐ「接地」と接地後の完了検査

これまでの連載

前回の連載第10回では、電圧上昇抑制機能について説明した。今回は、事故を防ぐ「接地」とその他の電気技術について紹介する。

なお、実際の接地工事には電気工事士の資格が必要である。

1.接地工事

(1)概要
接地は、電気による事故を回避するために各種機器の金属筐体(きょうたい)や、電力線の中性点などを電気的に大地へ接続することである。アース、グランドなどとも呼ばれている。

大地は抵抗が低く、電気を通す。そのため、大地は電気配線において電圧の基準となる0[v]としている。

金属筐体、中性点などが大地に対して電位を持つと、人体の接触による感電事故や、機器や配線での漏電による火災などの原因になる。各ポイントでの接地工事は、不要な電気を大地に流すことで感電などの程度を軽減し、大地へ逃がす電流で漏電遮断器を確実に動作させる目的がある(図1)。

●図1 漏電と接地工事(画像をクリックすると拡大します)

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(2)接地工事の対象
接地工事の対象には、電気機器の架台や金属製の外箱、金属管などがある。太陽光発電システムにおいては、太陽電池モジュール(架台含む)、接続箱、パワーコンディショナが接地工事の対象に含まれる。

(3)接地工事の種類
接地工事には、A 種、B 種、C 種、D種の4種類がある(表1)。A 種、C 種、D 種は電路(電流を流す電線)に接続する機器の金属の架台や外箱などに適用するもので、使用する電圧によって3つに区分されている。C種、D種の配線に使用する接地線は、直径1.6[mm]以上の軟銅線などで被覆の色は緑である。

B種接地工事は他と異なり、高圧電路や特別高圧電路を低圧電路に接続するために電圧を変換する変圧器(柱上のトランスなど)の低圧側の中性点や1端子に使用するものである。

なお、表1の中で記載している電圧の区分を表2に示す。住宅内の使用電圧は交流600[v]以下なので低圧に区分され、C種かD種の接地工事になる。

●表1 接地工事の種類と概要(画像をクリックすると拡大します)

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●表2 電圧の区分(画像をクリックすると拡大します)

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(4)太陽光発電システムの接地工事
太陽光発電システムで接地工事する箇所を図2に示す。接地工事の種別であるが、太陽電池アレイの出力電圧が300[v]以下の場合はD種、300[v]を超える場合はC種になる。

●図2 太陽光発電システムの接地工事箇所

図2

・太陽電池モジュール……太陽電池モジュールの外枠と架台が金属なので、接地工事が必要である。モジュールを取り付ける前に、接地線で架台間を芋づる式に接続していく(図3)。外枠と架台は電気を通すので、架台を通してすべてのモジュールが接地される。

●図3 太陽電池アレイの接地工事

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・接続箱……通常、接続箱の内部に接地端子が用意されており、ここへ接地工事を行う。なお、接続箱内で雷対策用のSPDを使用する場合、SPDの接地としても利用する場合がある。

・パワーコンディショナ……本体に接地端子があるので、そこに接地線を接続する。

・金属配管など……必要に応じて、配線を保護する金属配管に接地工事を施す。

(5)接地極
・接地極の構造……接地工事における大地との接続は、銅板や銅棒などの接地極に銅の絶縁電線(銅線に絶縁性の被覆をした線)を、ろう付け(融点の低い合金による接着方法)などの確実な方法で接続し、板状の接地極は地中深く埋め込む、もしくは棒状の接地極を打ち込むことで行う。また接地工事は、接地極から出る絶縁電線で行う。表3に、接地極の種類と寸法の例を示す。

●表3 接地極の種類と寸法の例(画像をクリックすると拡大します)

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・接地極の埋設場所……接地極を埋める場所は、水分が多い土が電気を流しやすいので水分をできるだけ含み、土質が均一で、金属を腐食させるガスや酸類などの成分を含まない場所を選ぶ。

接地抵抗値は季節などによって変動するので、規格の上限値ではなく余裕を持った値になるように接地極の工事を行う。1つの接地極で規格の抵抗値を満足できない場合には、並列抵抗の原理を利用して、複数の接地極を離れた場所に埋め、接地線を1つにまとめて使用する。また、接地極の深さを5m以上の深さにすると、季節変動が少ないとのデータもある。

・接地抵抗の測定……接地抵抗値の測定は、「接地抵抗計」により行う。接地抵抗計は、接地極へ接続するE端子、測定用の接地棒2本へ接続するC端子とP端子を接続することで、大地と接地線の抵抗値を精密に測定できる(図4a)。

また、接地極の付近に地中を通る鉄製の水道管があるなど「完全な接地」に近い場合や、B種接地などあらかじめ接地抵抗が分かっているものがある場合には、2点で測定を行う簡易的な方法もある(図4b)。

●図4 接地抵抗の測定(画像をクリックすると拡大します)

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2.接地抵抗以外の測定項目

太陽光発電システムの施工完了時の測定データ(接地抵抗含む)により、モジュールの正常性を確認できる。このデータは、定期保守時の測定結果を判断する基準データにもなるので、保存しておく必要がある。

基準データと定期保守での測定データの差により、経年変化や異常を判断できる。

(1)太陽電池モジュール(納入時検査)
太陽電池モジュールに太陽光を当てながら、テスターで開放電圧Vocと短絡電流Iscを測定し、規格値との差が大きくないことを確認する。

なおテスターの設定は、直流モードでレンジを出力の最大値以上に設定する。テスターの極性を間違えないように注意する。

またストリングチェッカーで測定すると、VocとIscを含むI-V特性が測定でき、I-V特性グラフより視覚的に異常を判断できる。

(2)太陽電池ストリングの電気特性
・概要……テスターまたはストリングチェッカーで、モジュールと同様に測定できる。モジュール面の照度と温度のデータが計測できれば、ストリングチェッカーへの入力で標準条件(1000W/㎡、25℃)への補正計算も可能である。

・開放電圧などの測定手順例

(ⅰ)接続箱の開閉器をすべてOFF にする。

(ⅱ)測定するストリングの開閉器の2次側に適切なモード、レンジを設定した測定器を接続する。

(ⅲ)該当する開閉器をONにして測定する。

安定した日射強度が必要なので、晴天時の南中時刻に行うのがベストである。特に短絡電流Iscは、照度に比例するので注意が必要である。

●図5 開放電圧などの測定例(画像をクリックすると拡大します)

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・測定値の判断……各ストリング間での電圧差、電流差が少ないことを確認する。開放電圧においては、各ストリングの電圧差が太陽電池モジュールの開放電圧の半分以下を正常とする判断方法もある。

(3)絶縁抵抗の測定
・概要……太陽電池ストリングの電路が大地から絶縁しているかを絶縁抵抗計(メガー)で確認し、通電可能かを判断する。絶縁抵抗値は表4の通りである。住宅用では0.2[MΩ]以上が一般的であるが、施工マニュアルなどで確認する。なお絶縁抵抗は、温度と湿度に影響されるので、これらも記録として残す。

●表4 低圧電炉の絶縁抵抗(画像をクリックすると拡大します)

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・絶縁抵抗の測定手順例

(ⅰ)接続箱の開閉器をすべてOFFにし、雷対策のSPDがある場合は接地線を外す。

(ⅱ)測定用開閉器のOFFを確認し、測定するストリングの開閉器の2次側に接続する。

(ⅲ)該当ストリングの開閉器をONにする(A)。

(ⅳ)測定用開閉器をONにする(B)。

(ⅴ)絶縁抵抗計をONにして測定する(C)。

●図6 絶縁抵抗の測定例(画像をクリックすると拡大します)

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また、安全面での注意として以下がある。

※終了時は必ず(ⅴ)から(ⅰ)へ、上記の逆の手順で行う。

※太陽光発電の出力を低下させるために、モジュールに覆いを被せる。

※測定者は絶縁対策として、乾いた軍手やゴム手袋などを着用する。

また測定を安定させるために、測定用開閉器と測定用配線は、絶縁ゴムシートなどで対地との絶縁を確保することも必要である。

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▲接地抵抗の測定風景

太陽光発電システム(12)発電量が低下する「ホットスポット」とは

投稿日時:2014715

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太陽光発電・電気理論 第12回

発電量が低下する「ホットスポット」とは

前回の連載第11回では、事故を防ぐ「接地」と接地後の完了検査について説明した。今回は、発電量が低下する「ホットスポット」について紹介する。

これまでの連載

1. ホットスポットとバイパスダイオード

(1)ホットスポット

セルが電流を流さず(または流しにくくなり)発熱することを「ホットスポット」と呼ぶ。セルへの影やセルの劣化・欠陥(配線不良、ひび割れなど)が原因である。

モジュールはすべてのセルを直列接続しているので、ホットスポットのセルがあると、モジュール全体の電流が制限されて、モジュール全体の発電効率が低下する。
さらに、発熱がモジュールの劣化・故障や事故の原因となる。

(2)ホットスポットのメカニズム

影による照度低下などでセルの出力電流が減少すると、抵抗のように他のセルからの出力電流を制限する。
この際、セルが電流を制限するために発熱する(図1)。

●図1 ホットスポットの概要(クリックすると画像を拡大します)

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(3)バイパスダイオード

ホットスポット対策のために、太陽電池と並列に接続するのが「バイパスダイオード」である。正常に発電している太陽電池は、前後の太陽電池と同じ電流を流すので、バイパスダイオードには電流が流れずOFF の状態となる(図2)。

●図2 ホットスポットとバイパスダイオード・正常時の電流(クリックすると画像を拡大します)

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影などによって出力電流が低下した太陽電池は、他の正常な太陽電池から流れ込む電流をすべて流せない。そこで溢れた電流を流すためにバイパスダイオードがON 状態になり、溢れた電流を次の太陽電池へと流す(図3)。

●図3 ホットスポットとバイパスダイオード・ホットスポットでの電流(クリックすると画像を拡大します)

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また、太陽電池が一切電流を流さないときは、バイパスダイオードがすべての電流を流す。バイパスダイオードによって、太陽電池が無理に電流を制限することがなくなるので、発熱を抑えられる。

(4)モジュールのバイパスダイオード

シリコン結晶系のモジュールは、多くのセルを直列接続している。セルは、60枚(6枚×10枚)のセルから成るシステムを例に、モジュールとバイパスダイオードの関係を見ていこう。

バイパスダイオードは各セルに接続するのではなく、セルを複数のグループに分割し、グループ単位に接続する(図4a)。このグループは「クラスタ」と呼ばれる。このシステムはセル20枚(横2列)を単位とした3クラスタ構成である。

●図4 モジュールとバイパスダイオード(クリックすると画像を拡大します)

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各クラスタが同じ電流量の正常時には、バイパスダイオードはOFF の状態(図4a)である。

クラスタBのセル1枚以上がホットスポットになって電流を流さない状態になると、クラスタBの電流は止まり、バイパスダイオードがONになる。そのためクラスタBは出力しない(図4b)。

●図5 クラスタの各状態におけるI-V特性

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正常時のI-V特性は、3つのクラスタが直列接続なので、クラスタ単体のI-V特性(図5i)を電圧方向に3倍した値になる(図5ii)。Pmaxは最大出力を取り出せる電流、電圧の点である。

クラスタBのバイパスダイオードがONの状態では、クラスタBの出力を除いたI-V特性になり(図5iii)、モジュールのPmaxは電圧の低い点Pmax1へ移動して、出力は正常時の2/3である。

これらの中間状態として、クラスタBのセルが若干の電流を流す場合、その電流がクラスタBの電流になり(図4c)、クラスタBの出力を除いたI-V特性(図5iii)にこの電流分が足さる(図5iv)。モジュール単体のPmaxはクラスタBに流れる電流I に応じてPmax1とPmax2の点が考えられ、どちらも正常時より出力が低下する。

(5)調査方法

お客様から「発電電力が下がった」と申告があった場合などは、このホットスポットによるモジュール不良の可能性がある。また定期点検の際にも、ホットスポットが発生していないかの確認が必要である。

・赤外線サーモグラフによる表面温度測定

赤外線サーモグラフは、表面温度の測定器である。測定対象に向けることで、画面上に色の違いで温度を表示するハンディタイプのものがあり、温度上昇しているホットスポットを容易に発見できる。

ただし正常なセルであっても、影などによってホットスポットが発生するため、温度測定はあくまでも異常なセルの候補を抽出する方法であり、特定には電気的な測定が必要である。

・I-V特性測定器による測定
各ストリングを接続箱の開閉器で切り離し、I-V特性を測定する。施工完了時のI-V特性との相違、測定したグラフの異常などで、ストリング単位で特定できる。

・バスバー電極の電流測定
バスバー電極は、モジュール表面に見えるセル間の配線である。モジュール表面にプローブを置くだけで、非接触でバスバー電極の電流(セルが出力する電流)を確認できる測定器があり、電流が流れない(または少ない)クラスタを特定できる。

2.モジュールと影の影響

影の領域が「クラスタ内で増えていく場合」と「クラスタをまたがって増えていく場合」をI-V特性で比較し、前者の方が発電量への影響が少ない。
なお、説明を簡素化するため、影のあるセルは発電をしない(電流を流さない)という条件とする。

(1)影がクラスタ内から増える場合(図6)

クラスタAのセル1枚に影ができると、クラスタAは電流を流さないため、発電量は2/3になる。クラスタA内の8枚のセルすべてに影ができるまで同じである。
さらにクラスタBのセル1枚(9枚目)に影ができると、クラスタBも電流を流さず、発電量は1/3になる。

クラスタB内の8枚のセルすべてに影ができるまで同じである。クラスタCも同様である。

●図6 電気測定の例・影がクラスタ内から増加(画像をクリックすると拡大します)

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(2)影が各クラスタで増える場合(図7)

クラスタAのセル1枚に影ができると、クラスタAは電流を流さず、発電量は2/3になる。さらにクラスタBのセル1枚(3枚目)に影ができると、クラスタBは電流を流さず発電量は1/3になる。
そして、クラスタCのセル1枚(5枚目)に影ができると、モジュールは発電しない。

●図7 電気測定の例・影がクラスタをまたがって増加(画像をクリックすると拡大します)

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(3)上記例の比較

影がクラスタ単位で増える場合(図6)はセル8枚まで発電量は影のないときの2/3であるが、影が各クラスタをまたいで増える場合(図7)はセル2枚までで発電量は2/3、セル3枚だと発電量は1/3、セル5枚で発電停止である。
このように同じ影の面積でも、モジュールの設置レイアウトで発電量が大きく変わる。

太陽光発電システム(13)ストリングの方位と日射による発電量の算出方法

太陽光発電・電気理論 第13回

ストリングの方位と日射による発電量の算出方法

連載第12回では、発電量が低下する「ホットスポット」について紹介した。連載最後となる今回はストリングの方位と日射による発電量の算出方法について説明する。

これまでの連載

1.ストリングの方位レイアウト

ストリングの各モジュールは、同じ方位に設置するのが望ましい。ここではその理由について解説する。なお、太陽の向きは真南とする。

(1)すべて南向きの例

各ストリングの照度が同じになるため、各ストリングのI-V特性は同じである。各ストリングを接続箱で並列接続するので、ストリングのI-V特性を電流方向に足したI-V特性になる。
なお、各モジュールのI-V特性への対応例を図1のa~hで示す。

●図1 すべて南向きの場合のストリングの配置とアレイのI-V特性例

図1

(2)南向きと西向きの例

ストリングごとに照度が異なるので、照度の弱い西側のストリングの出力電流が少なくなるが、Pmaxによる面積より出力を完全に取り出せるので問題はない。

●図2 南向きと西向きの場合のストリングの配置とアレイのI-V特性例

図2

(3)モジュールが複数方位
ストリングBの南面(e,f)と西面(g,h)のモジュールは照度が違うため出力電流が異なり、ストリングBのI-V特性は階段状になる。Pmaxは出力の少ない西面のモジュールで決まるため、南面のモジュールの出力を完全に取り出すことができない。

●図3 モジュールが複数方位の場合のストリングの配置とアレイのI-V特性例

図3

これらより、モジュールの電力をすべて取り出すにはストリング内のすべてのモジュールを同一方向にする必要がある。ストリング内のモジュール枚数が足りない場合は、マルチストリング型パワーコンディショナに直結させたり、昇圧器を使うといった方法がある。

2.発電量の算出方法

発電量の算出にはいくつかの方法があり、代表的なものとして「JIS C 8907 太陽光発電システムの発電電力量推定方法」や、太陽光発電協会(JPEA)による算出方法などがある。ここでは、JPEAの方式による年間発電量の計算について説明する。

(1)年間予想発電量の算出式
年間の予想発電量E[kWh/年]の式は以下となる。

E=P×H×365×KPT×K”×η÷G

P[kW]:太陽電池アレイの出力
H[kWh/(㎡・日)]:設置面の年間平均
日射量(1日分)
365:H を年間総量にするための年間日数
KPT:温度補正係数
K”:その他の損失係数
η(イータ):パワーコンディショナの変換効率
G[kW/㎡]:モジュール評価の日射強度

太陽電池全体の出力Pと日射量Hの積が、損失を考慮しない1日の発電量である。それに年間の日数365を掛けると、年間の発電量になる。
損失分を除く計算は、各種損失係数を掛けることで行う。温度補正係数KPTはモジュールの公称出力での温度条件(25℃)からの気温変化による発電量低下分、その他の損失K”は受光面の汚れや配線などによる損失分、変換効率ηはパワーコンディショナでの損失分で、これらを掛けて年間の予想発電量Eを求める。

さらにGは、モジュールを評価するときの日射強度で、モジュールの公称出力を1[kW/㎡]照射時の出力に換算する。なおストリングの設置方位が異なる場合には、方位ごとに日射量が変わるので、方位ごとの計算が必要になる。

(2)太陽電池アレイの出力P
モジュール単体の公称最大出力を、アレイのモジュール数倍したものである。例えば、240[W]のモジュールを南面に12枚設置している場合は、

240[W]×12枚=2.88[kW]

となる。

(3)日射量
日射量は、1㎡(単位面積)が1時間(一定時間)に太陽から受けるエネルギーの総量で、単位は[Wh/㎡]である。日射量は時刻や季節で変化するため、太陽光発電の計算では月や季節、年間の平均値で1日の総量を算出し、単位は[kWh/(㎡・日)]になる。
日射量は「直達日射量」「散乱日射量」「全天日射量」の3つに大別される。「直達日射量」は太陽からの直接光、「散乱日射量」は大気で散乱された光、「全天日射量」は空全体から受ける光で「直達日射量」と「散乱日射量」の合計である。

さらに「反射日射量」は建物や道路、雲などから反射された光の日射量である。また、モジュールなどの傾斜面への光による「傾斜面日射量」があり、「全天日射量」の一部(傾斜角で変化)と「反射日射量」の合計になる。

(4)設置面の平均日射量H
過去の測定値を統計的に処理した地域ごとの日射量が公開されており、これを計算で使用する。代表例は、日本気象協会による「日射関連データの作成調査」(22年3月)や「MONSOLA-11」である。ストリングを設置する方位と傾斜角ごとに月や季節、年間の平均日射量を得られる。今回は、MONSOLA-11のデータを使用する。

MONSOLA-11とは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のWebサイトで、無料で公開されている日射量のデータである。「日射量データベース閲覧システム」上でMONSOLA-11で、地域を指定すれば各種シミュレーションが可能である。

さらに「データ一覧表を表示」を選択すれば、指定した地域の「斜面日射量」が一覧表示され、印刷もできる。

表1に東京地区の日射量(年間の平均値)を示す。モジュールの傾斜角と方位により、適切な値を選択する。表2は方位角0°(真南)、傾斜角30°を100[%]とした日射量の変化率で、この位置から離れるに従って、日射量が減っていく。

●表1 MONSOLA-11による年平均斜面日射量

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●表2 MONSOLA-11による年平均斜面日射量の変化

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(5)温度補正係数KPT
結晶系シリコンの太陽電池の温度補正係数を表3に示す。気温が高い季節は、損失が大きくなる。

●表3 結晶系シリコン太陽電池の温度補正係数

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(6)その他の損失係数K”

この損失係数は、設置条件などによって変わる。特に傾斜角度や方位は必ずしも表2のようにきりのいい数値ではないため、その微調整分と考えるとよい。

(7)変換効率η
各メーカーの変換効率を使用する。

(8)試験条件の日射強度G
通常は1[kW/㎡]なので、計算上は無視できる。

3.年間発電量の算出例

3方位のアレイ配置による年間予想発電量を、概算で試算してみる。南側と東西側の日射量が異なるので、個別に計算して合計する。

(1)モジュール配置・条件
配置は図4の通りで、傾斜角は30°とする。各ストリングはモジュール5枚で、南に2ストリング、東と西に各1ストリングずつの4ストリング構成である。
方位を示すために南面のストリングは「S」、東西面は「EW」をE、Hに付ける。また、計算で使用する条件は表4の通りである。

●図4 設計例のモジュール配置clip_image123

●表4 ある太陽光発電システムの設計例の条件

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(2)ストリングの出力

各ストリングのモジュールは5枚なので出力Pは以下のように算出できる。

P=240[W]×5[枚]
=1,200[W]
=1.2[kW]

(3)年間の日射量
表1は1日の日射量なので、日数倍して1年間の日射量(H)にする。

HS=3.73[kWh/(㎡・日)]×365日
=1,361[kWh/(㎡・年)]

HEW=3.11[kWh/(㎡・日)]×365日
=1,135[kWh/(㎡・年)]

(4)全体の損失係数K の算出
各損失係数は方位に関係なく共通なので、まとめた損失係数をKとして算出しておく。
K=KPT×K”×η
=0.85×0.95×0.94
=0.76

(5)南面の発電量
発電量ESは、以下の式になる。
ES=2P×HS×K
= 2.4[kW]×1,361[kWh/(㎡・年)×0.76
=2,482[kWh/年]

2ストリングなのでPを2倍し、G=1[kW/㎡]なのでGを省略して、単位を[kWh/年]とした。

(6)東西面の発電量
発電量EEWは、同様に以下となる。
EEW=2P×HEW×K
=2.4[kW]×1,135[kWh(/㎡・年)]×0.76
=2,070[kWh/年]

ESとEEWは、どちらもモジュール5枚×2ストリングと同じ構成だが、方位によって約400[kWh/年]の差が付くことが分かる。

(7)全体の発電量E
全体の発電量E は、各発電量の合計で以下の式になる。
E=ES+EEW
=2,482+2,070
=4,552[kWh/年]

なお詳細な計算では、月毎の平均日射量と温度補正係数にて月毎の発電量を算出し、結果を合計する。