家電量販店マッサージチェア販売員 学生バイトへの指導「あなたは何を売っているの」

イケメン、エスプレッソマシン販売バイト君

イケメンのお兄さんが全世界規模でコーヒーや関連ツールなどを販売する企業からエスプレッソマシンの販売員として俺たちのいる店ににやって来た。

少しして、彼の売り場が我々の隣に移動になった。彼はM大学の4年生で、両親は離婚しており、母の助けになるようにバイトをしているそうだ。

お婆とオイラは感心し、助けになることはしてあげようと相談した。そして、マッサージチェアに乗り終わった人に、コーヒーは飲まれますか?と聞いて、YESの人は彼のところに連れて行ってあげることにした。

試飲客のキャッチは難しい技だが、我々二人にかかれば一日十人ぐらい紹介するのは簡単である。

ところが、試飲客を誘導したあと彼のトークを聞いていると全然なっていない。

「こちらの商品はこれこれこういう特徴がありこれこれこういう原料でできておりましていくらです」と言う説明をカタログ読み的に繰り返しているだけであった。

そこで彼に販売方法アドバイスしてあげることにした。

このように教えた。

夢のあるストーリーを映像を再現するように話せ

マシンは1万円~2万円で、専用のコーヒーカートリッジが60円前後である。香りがほんとに良い。

まず、売るのは商品ではない、商品を買った後の快適さや生活の潤いや小さな喜びなど、商品がもたらす「小さな夢」を提供するのだ。

このマシンにコーヒーカートリッジをセットしてテーブルに置いておきます。
目覚めた時に、目覚ましを止めるスイッチともう一つコーヒーメーカーのスイッチをポンと押してください。

1・ 2分後にはこのコーヒーのふくよかな香りが部屋中に漂いだします。

あなたは、コーヒーの素晴らしい香りのなかで心地よくだんだんと目が醒めてきます。

ゆっくり起き出して、カップにコーヒーを移し、香りを胸いっぱいに吸い込みます。

そして、ほろ苦くも芳醇なコーヒーを口に含みます。

あ~~これほど心地よい目覚めがあるでしょうか!?

このようにストーリー立てて話し、相手に自分の部屋で再現する映像を想い起こさせるのです。何度でも。

商品を割高だと思ったら絶対売れない。

彼はカートリッジ1個が60円するのを高いと思っているようで。言葉からそのニュアンスが漏れている。そこでこうアドバイスした。

買った人がこれだけの体験をできたら60円と言うのはとても安い料金です。あなたはこう言えばいいのです。

「缶コーヒー1本120円で買っておき、寝起きにプルタブを引っ張るより、その半分の60円でこれだけのゴージャスな気持ちが味わえます。何より、この香りは珈琲店の本格ドリップコーヒーにも負けていません。」

60円で戦う相手を、120円の缶コーヒーから、300円の本格コーヒーに変えるのだ。なんとも安い。

コーヒー好きの方、特に香りが好きな方はもうたまりません。欲しくて欲しくて衝動買いをしてしまうことでしょう。

最初彼は「月に2・3台」しか売れていなかったが、私らのアドバイス後は「1日に3~5台」売れるようになり、全国の販売員の中でトップ5に常に入るようになったと報告してくれた。

届いていた無償の思いやり

ある日、上品な奥様が売り場に来られた。

私「どうぞお試しください」
女性「じゃあ」
私「どのへんがお疲れですか」
女性「特にありません」
私「・・そうですか、マッサージは健康増進としてもとても有効ですから」
女性「はい、・・・・痛い」
私「一番弱くしますね。マッサージをして血行が良くなって、良い睡眠が取れるようになると。新陳代謝が活発になり、美容と健康にこれほどいい循環はないと言えます」

バイト君「おかん!何してんの?!!」
女性「ああ〇〇」

女性はエスプレッソ君のおかんだったのだ。

女性「息子がものすごくお世話になっているそうでお礼に来たんですが、一度接客も受けてみようと思ってほほほ。一瞬買おうかと思いました」

バイト君は、お母さんに我々の話をしていたらしい。お母さんはイベント会場などの生花を設営する会社の社長だそうで、お礼方々、我々の接客トークに興味があったらしい。

我々の思いやりはバイト君へ伝わっているようでそこは嬉しかったが、おかん、金があるなら一台買ってくれ。

ほんとは売れないエスプレッソマシン

彼がお休みの時、会社の部長さんが販売のピンチヒッターに来られました。アルバイトではなく彼が来たと言う事は、「俺なら1日十台売ってやるわい」と思ったんに違いありません。ところが土日の2日経って販売成績はゼロでした。「簡単じゃないなー」と言ってました。そりゃそうだ。

さて、彼は就職を控えた大学生だったのでやがて辞めていきました。その後には大学生のお姉さんがやってきましたが、彼女はコーヒーをほとんど飲まないそうで、「朝スイッチを入れたときに部屋中に漂う香り」の意味が実感としてわからないようで、全く説得力がありませんでした。

「あなたの部屋に」は、クロージングその1

「あなたの部屋にこの商品を置いたところを想像してみてください。・・・・・・」というのは、私が、「マッサージ試乗」から「マッサージチェア販売」へモードチェンジする時の常套句です。

「気持ち良かったでしょう!!!この機械が家にあれば、毎日お風呂を出たあとにドンと横たわってこのマッサージが受けられるんですよ〰。毎日そこで寝ちゃうかもしれませんね〰〰。起きたら若返ってるかもしれませんね!」

たくさんのお客様が、これで買ってくれました。

 

 

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